フィルムなどに印刷でフレキシブルな熱電変換素子作ることに成功
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は9月30日、プラスチックフィルムや紙などのフレキシブルな基板上に熱電変換素子を印刷で形成する新技術を開発したと発表した。設置場所の形状に制約されずに設置でき、機器や設備からの廃熱などを電気に変えられるため、発電効率などの性能を今後高めれば環境中に広く存在する未利用エネルギーの活用が期待できるという。
 熱を電気エネルギーに変換する熱電変換素子は、現在レアメタル(希少金属)を主な原料としており、低コスト化や素子の大面積化が難しく、設置場所が限られるなどの問題点を抱えている。産総研は、これらの課題の解決を目指し、今回世界に先駆けてフレキシブル熱電変換素子の印刷形成技術を開発した。
 用いた材料は、微細な炭素材であるカーボンナノチューブ(CNT)。高分子溶液中にこれを入れると凝集してしまうことから通常は分散剤を用いるが、CNT・高分子複合材料中に分散剤が残ると電圧の発生が低下するため、分散剤を使用せずに機械的に分散させる技術を開発、こうして作ったCNT・高分子複合材料を溶媒に溶解するよう材料調整してインク化した。このインクを用い、印刷によりフレキシブル基板上にパターンを形成し、これを乾燥、焼成して熱電変換素子を得た。
 今回、厚さ20μm(マイクロメートル、1μmは100万分の1m)のプラスチックフィルム上に、幅0.5mm、長さ0.8mm、厚さ0.3mmの素子を1,000個直列に接続した構造の熱電変換フィルムを試作、温度が約10℃のこのフィルムに手を当てたところ、108.9mVの電圧が発生した。25℃の室温と36℃の体温程度の温度差でも作動が確認されたという。曲率半径5mm程度に折り曲げても損傷は見られず、曲面、球面形状への設置に対する高い適応性も確認できたという。
 今後は、熱電変換効率などの性能を向上させ、企業と組んで製品化を目指したいとしている。

詳しくはこちら

印刷で作ったフィルム状の熱電変換素子(提供:産業技術総合研究所)