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廃棄されるキャベツの芯を生まれ変わらせ新素材に―3Dプリント技術を用いて資源化:農業・食品産業技術総合研究機構

(2022年8月29日発表)

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キャベツおよびキャベツの芯 (提供:農研機構)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は8月29日、用途が無くて廃棄されているキャベツの芯を次世代の加工技術として注目されている3Dプリント(3次元プリント)技術を利用して新素材に変える方法を見つけたと発表した。キャベツの芯の硬さを持った歯ごたえのある食感の新たな食材が作れると見て農研機構は引き続き企業と協力して研究を進め実用化を目指すといっている。

 キャベツの芯は、キャベツ玉の重さの15%前後を占める。しかし、硬いために多くの場合加工段階で切り捨てられ日本食品標準成分表でもキャベツの芯は廃棄部位と位置づけられている。

 だが、その芯には食物繊維のほか炭水化物をはじめ、アミノ酸やビタミン、リン、カリウム、カルシウム、さらにはクロロゲン酸などの抗酸化作用、抗炎症作用をもったポリフェノール類などが含まれていることが分かっている。そのため、これまでもそれらの栄養分や機能性成分を保持したまま保存し利用できるようにしようと乾燥後微粉末にして料理などに添加するという利用法の研究開発がされてきたが、微粉末化で持っている生鮮食品独特の食感がなくなってしまうため用途が限られていた。

 それに対し農研機構の研究グループは、3D成形のために開発済みの「ナタピューレ」と呼ぶセルロースとβ(ベータ)グルカンからできた結着性を高める新物質を混合して粗粉末(粒径の粗い粉末)に変え、そのペーストをノズルから押し出し3Dプリント技術で必要とする食品の形状に成形するという方法を今回開発した。

キャベツ芯部由来の粗粉末にザワークラウトエキスとナタピューレとを混合し、押出成形(筒先内径:8ミリメートル)によって作った棒状食品。造形時に粗粉末が飛び出すことで、表面が粗くなっている。(提供:農研機構)

 

 3Dプリント技術は、CAD(コンピューター支援設計)で物体の立体データを得る設計法で、建築の設計などに使われている。近年は食品の分野でも次世代成形技術として注目され、様々な研究が進んでいる。

 フードロス削減に取り組む農研機構は「硬い食感を与える新たな粗粉末を3Dプリント工程に活用できる可能性を示した。キャベツの芯を生まれ変わらせ新素材にできる」といっており、カット野菜製造企業などと連携して実用化を加速することにしている。