生分解プラスチックの材料設計サイクルを高速化―多様な物性の要求に応える新材料開発手法を考案:理化学研究所
(2025年6月23日発表)
(国)理化学研究所の研究チームは6月23日、単一の計測から複数情報を抽出し、多様な物性が要求される生分解プラスチック材料を開発する新手法を考案したと発表した。環境低負荷型のプラスチック材料設計サイクルを高速化できるという。
近年、プラスチック材料開発には、分解性と丈夫さなどといった複数の物性を同時に実現でき、かつ迅速に設計できる手法が求められている。こうした材料の開発にあたり、従来は材料評価に長時間を要したり、人件費や機材運用などのコストがかさんだりするといった課題を抱えていた。
研究グループは、環境低負荷の次世代材料として注目されている生分解プラスチックの開発を例に、材料設計手法の効率化を検討した。
注目したのは、複数の情報を短時間かつ簡易な測定で同時取得できるTD-NMR(時間領域核磁気共鳴)法と、AI手法の一種である畳み込みニューラルネットワーク(CNN)。
TD-NMRは一度の測定で多くの情報を取得できる半面、多様な情報が重なり合うため信号の解釈が難しいという課題がある。こうした信号の重なり合いは、あたかも複数の人から同時に話しかけられる状況に近く、その成分の情報を聞き分けるには、多くの声を同時に処理可能な”聖徳太子“並みの解釈機構が求められる。
そこで研究では、信号処理に強く、信号の特徴を小項目ごとに点数として表現可能な深層学習の一手法であるCNNを信号解析に利用した。これまで解釈が課題とされてきたTD-NMR信号を効率的に解釈できるという。
今回提案した新手法はAIの材料分野への応用可能性を広げ、材料工学と情報工学の学際領域であるマテリアルズインフォマティックスのさらなる進展に寄与することが期待されるとしている。