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イネ遺伝子を書き換え易くするゲノム編集技術を開発―かんきつ類などにも使える可能性を検証する:愛媛大学/農業・食品産業技術総合研究機構

(2019年5月20日発表)

 愛媛大学農学研究科の賀屋秀隆准教授と、(国)農業・食品産業技術総合研究機構の土岐精一ユニット長らのグループは5月20日、イネの遺伝子を標的として塩基のアデニン(A)をグアニン(G)に置換する際に、標的範囲を広げられる新たな技術を開発したと発表した。この技術を使うと、イネだけでなく将来は愛媛県の代表的な作物であるかんきつ類の品種改良も可能になるとみている。

 ゲノム編集とは、生命の設計図であるゲノムDNAを構成する塩基配列を人為的に改変するもので、動植物の品種改良や遺伝子治療などの応用研究に向けて世界中で取り組まれている。

 その主要な道具の1つがCRISPR/Cas9で、DNA配列を切断するハサミの役割をしている。ゲノム編集ではまず改変したい部分のDNA配列を切断し、細胞の持つDNA修復機構を利用する。標的の近くにPAMと呼ばれる特定の配列がある。ゲノム編集はPAMの周辺でしかできないという制限がある。

 一般的に細菌由来のSpCas9は物理的にサイズが小さいのでよく使われている。しかし狙った塩基を、望む塩基に正確に置き換えるために、遺伝子の機能を制御するのは簡単なことではない。

 昨年、東京大学理学部のグループがSpCas9の改良型のSpCas9-NGを開発した。これはPAMと呼ばれるDNA配列を認識し、PAMの上流3〜4塩基の間でDNAを切断することができる。また米国では酵素の一種アデノシンデアミナーゼを使って、狙った位置のアデニンをグアニンに塩基置換できる技術が報告されている。

 農研機構・愛媛大グループは、日米の最新の技術を独自に融合させてイネの遺伝子の改変に応用した。

 まず酵素SpCas9―NGv1に変異を入れ、DNAを完全には切断できないようにした。これにアデノシンデアミナーゼを融合させたものを作成し、アデニンをグアニンに塩基置換できることをイネで確かめた。

 今後は、愛媛県の特産のかんきつ類などでもこの技術が適用できることを検証することにしている。