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機能性成分の「ルチン」を廃棄物から画期的高濃度で回収 ―ダッタンソバ生産で生じる「ふすま」の資源化に道:農業・食品産業技術総合研究機構

(2021年1月20日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は1月20日、薬剤や食品類に使われる機能性成分の「ルチン」をこれまでにない高濃度で得る方法を見つけたと発表した。近年人気化しているダッタンソバの生産で生じる廃棄物の「ふすま」から得るというもので実用化が期待される。

 ダッタンソバは強い苦味があることで知られ「苦そば(にがそば)」ともいう。古くはモンゴルに住む遊牧民族をダッタンと呼び彼らが好んで食べたことからその名がついたとされ、実(み)に苦味の元になっているルチンが豊富に含まれる。近年はそのダッタンソバが日本でも特産作物として北海道や長野県などで盛んに栽培されている。

 ルチンはポリフェノールの一種でその分解生成物が苦味を持っていてダッタンソバの実に含まれているルチンは普通のソバの100倍程度にもなるとされるが、ルチンにはもう一つ別の顔として強い抗酸化作用があり毛細血管を強く丈夫にする働きがあって血管保護のための薬剤に広く使われている。

 現在ダッタンソバの実の利用は、粉砕すると得られるソバ粉だけにとどまっている。

 ダッタンソバ粉は、実をそば粉製造装置で粉砕し篩(ふるい)にかけて得るが、ソバ殻などを除いた後に残った比較的粒径の大きい粉状のものをふすまと呼び、多くの食物繊維と共にルチンを含んでいることが知られる。しかし雑菌が多いために保存性が悪く一部が家畜用の飼料として利用されているものの大部分は廃棄物として処分されている。

 こうしたことから農研機構はダッタンソバふすまの有効利用法の開発に取り組み、160~230℃の温度で焙煎(乾煎り:からいり)するという方法によりダッタンソバふすまからダッタンソバ粉の約5倍量ものルチンを含む「画期的なルチン高含有食素材」(農研機構)を得ることに成功した。

 既に特許として登録済みで、今後はルチン高含有の飲料や食品の開発を目指すとしている。