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海洋によるCO吸収量を評価―人為起源の3割程度を維持:気象研究所ほか

(2019年3月15日発表)

 気象庁気象研究所と(国)海洋研究開発機構は315日、人間活動に伴って大気中に排出される温暖化ガス「二酸化炭素(CO2)」の約31%は海が吸収し続けていることが分かったと発表した。世界17機関による国際共同研究によって突き止められたもので、地球温暖化の予測精度向上や海洋酸性化による生態系への影響など地球規模の課題解決に貢献すると期待している。

 国際共同研究は7か国17機関が参加して2003年にスタート、世界中で50回以上の研究航海を続けて最大6,000mまでの海水中のCO2などを測定した。これらのデータを1990年代に観測したデータと比較したところ、1994年から2007年までの13年間に大気中に放出されたCO2のうち炭素換算で約330tを海が吸収していることが分かった。

 この吸収量は、同時期に石油や石炭の燃焼、森林破壊などによって排出されたCO2のおよそ31%に相当、海が巨大な吸収源となって大気中のCO2増加を抑制していたことになる。さらにこの吸収比率を、産業革命から1994年までのおよそ200年間のデータと比較したところ、あまり変化は見られなかった。

 また、北大西洋での吸収は大気中のCO2増加量から予想された量より20%も少なかったが、南大西洋での吸収量は増加しており、大西洋全体のCO2吸収量はほぼ予想通りだったという。そのため国際科学者チームは「海洋のCO2吸収量は大気中のCO2増加に応答するだけでなく、海の循環変動にも影響を受けていることが分かった」としている。

 海はCO2の巨大な吸収源となって安定的に地球温暖化を緩和していることが分かった、その一方で吸収したCO2によって海の酸性化は確実に進む。この点についても、国際科学者チームは、貝類やサンゴ、魚など多くの生物が危機にさらされている点を理解することが重要、と指摘している。