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分子量が10万を超す高分子解析できるNMR測定法を開発―バイオ医薬の研究など幅広い分野に使える:産業技術総合研究所

(2019年3月11日発表)

 (国)産業技術総合研究所は311日、これまでより一桁大きい分子を解析できるNMR測定法(核磁気共鳴測定法)を開発したと発表した。NMR測定法は、有機化合物の構造を調べる優れた測定法だが大きな分子に使えない課題があった。それを一桁上げ分子量が10万を超える高分子を解析することに成功した。バイオ医薬など高分子をターゲットとする研究に幅広く利用できるものと期待される。

 NMRは、ニュークリア・マグネティック・レゾナンスの略称。物質を構成している原子の原子核は、超微小な磁石で、バラバラに無秩序に自転している。NMR測定法は、その原子核に強力な磁場をかけると生じる「原子の共鳴現象」と呼ばれる現象を観測することによって物質の化学構造を明らかにするという分析法のこと。測定が簡単なわりに多くの情報が得られ、試料を壊さずに複雑な有機化合物を構成している水素、炭素、窒素といった化学成分の結合状態を知ることができる。

 こうしたことから、NMR測定法は、生命科学の研究や、医薬品・食品の開発をはじめ幅広い分野で使われている。

 しかし、全ての有機化合物に利用できるところまではいっていない。スイスのビュートリッヒ博士が「TROSY法」と呼ぶNMR測定法を提唱して2002年にノーベル化学賞を受賞して以来その「TROSY法」を使い高分子量のたんぱく質を観測する研究が行なわれてきた。しかし、高分子量になると感度低下が著しく、これまで分子量3万程度が観測の限界だった。

 ところが、現代の医療に不可欠となっているバイオ医薬の多くは有効成分が生体高分子なため分子量は大きく、たとえばバイオ医薬の一種である抗体医薬の分子量はその限界よりはるかに大きい15万にも達する。

 そこで産総研の創薬分子プロファイリング研究センターは、米国ハーバード大学医学部ダナファーバーがん研究所と共同で抗体など分子量が15万を超えるたんぱく質のNMR観測を可能にする新たな方法の開発を目指し研究に取り組んだ。

 その結果、従来とは異なる「FC-TROSY法」と呼ぶNMR測定法を開発、感度を大幅に上げて今回分子量が18万というたんぱく質の観測に成功した。

 産総研は「抗体など高分子量バイオ医薬の高次構造を試料に手を加えないで評価できる」といっている。