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薬で血圧を下げている人は合併症やリスク要因に注意を―2.7万人の20年間の調査で循環器疾患死亡リスク判明:筑波大学

(2019年3月20日発表)

 筑波大学は320日、疾患と要因との関連を調べる「コホート研究」という手法を日本人一般集団に適用して血圧と循環器疾患の関連性を長期にわたり観察したところ、降圧薬の服用で血圧を低く抑えていても、リスク要因や合併症を抱えている人の循環器疾患による死亡リスクは高いことが明らかになったと発表した。血圧が薬で下がっている場合も、併存するリスク要因や合併症への注意が必要としている。

 研究グループは、日本の30地域における合計27,728人の一般住民を対象に、血圧と循環器疾患死亡との関連、その関連が服薬の有無別にどのように異なるかを約20年間にわたって追跡調査した結果をまとめた。

 研究では、血圧値120/80mmHg未満を至適血圧、120-129/80-84を正常血圧、130-139/85-89を正常高値、140-159/90-99をⅠ度高血圧、160/100以上をⅡⅢ度高血圧の5群に分類、正常高値群との比較で死亡リスクを算出した。

 その結果、循環器疾患の死亡リスクは、至適血圧群で0.85倍、正常血圧群で0.96倍、Ⅰ度高血圧群で1.26倍、ⅡⅢ度高血圧群で1.55倍と、血圧が高くなるにつれてリスクが高くなることが認められた。

 この関連は降圧薬を服用していない人だけで見た場合同様だったが、降圧薬を服用している人だけで見た場合は、至適血圧群で2.31倍、正常血圧群で1.68倍、Ⅰ度高血圧群で1.56倍、ⅡⅢ度高血圧群で1.63倍と、U字形の関連を示した。

 これは、降圧薬によって血圧を下げることが原因で循環器疾患の死亡リスクが高くなることを示すものではなく、もともとリスクの高い人や合併症などを有する人に対して、血圧を下げる処置がなされていたり、合併症が原因で血圧が下がったりしていることで、そのもともとのリスク要因や合併症を原因とする循環器疾患死亡リスクが高くなる可能性を示しているものと解釈されるという。

 従って、降圧薬を服用し、血圧が129/84mmHg以下に下がっている人は、併存するリスク要因や合併症の管理に注意する必要があるとしている。