超音波で果樹園の害虫を防除する技術を開発
:農業・食品産業技術総合研究機構

 (独)農業・食品産業技術総合研究機構の生物系特定産業技術研究支援センターは7月7日、特殊な超音波によりモモなどの果樹園に飛来し、果実表面から果汁を吸うことで傷をつける害虫(ヤガ類)を、防除する技術を開発したと発表した。
 中山間地域に多い中小規模の果樹園では、ヤガ類の被害を受けると経営規模が小さいことからダメージが大きく、その防除対策が重要な課題になっている。
 ヤガ類は、林の中で生息しているが、夜行性で昼間の果樹園にはいないため、一般的な薬剤防除は難しい。防虫ネットや防蛾灯が、一般的な防除手段として普及しているが、防虫ネットは設置や強風対策などに大きな労力がかかること、防蛾灯は防除効果が不安定、などの問題点がある。
 近年、多くの害虫防除に、天敵生物の利用が広がっている。同センターでは、ヤガ類の代表的な天敵であるコウモリを利用することに着目した。コウモリは、エコロケーションサウンドと呼ばれる超音波パルスを発して、蛾などさまざまな夜行性昆虫を捕食している。
 今回の研究で、コウモリのエコロケーションサウンドに似た超音波(周波数40kHzの断続的パルス音波)を電気的な信号として生成する装置と、その装置に接続して、電気信号に基づいた超音波を発信する超音波振動子からなる防除装置を開発した。
 この装置を、徳島県立農林水産総合技術支援センター果樹研究所県北分場(徳島・上板町)のモモ園に約30㎡あたり1基の割合で設置して、防除効果を調査した。その結果、ヤガ類の飛来数は約20分の1まで減少し、虫害は10分の1以下となり、実用的な防除効果が確認された。
 同センターでは、これまでの研究で一定の効果が確認されたことから、今後は超音波の指向性の改善や出力性能の改良など、実用化に向けた装置の改良と現地試験を行う。

詳しくはこちら