高エネルギー加速器研究機構は7月9日、世界中から注目されている日本生まれの鉄ヒ素系超電導体の超電導相がコバルト原子を中心に島状になっていることを発見したと発表した。この新超電導体の発見者である東京工業大学の細野秀雄教授らと共同で「ミュオン・スピン回転法」と呼ばれる分析手法を使って発見した。 磁性の海に超電導の島が点在しているような島状の超電導状態の発見は、本来原子レベルでは互いに相容れない状態である超電導と磁性が一つの物質中で共存できることを示したもので、鉄系超電導体の超電導機構解明に今後大きな進展をもたらすものと期待される。 細野教授の研究グループは、昨年2月に鉄ヒ素系の超電導体を発表、世界中で大フィーバーを巻き起こしたが、昨年更に同教授らは鉄・ヒ素層内の鉄原子を鉄より1つ電子を余分に持つコバルトに置換する(置き換える)と超電導になることを発見している。 今回の研究は、カナダの研究所と東海村(茨城)の大強度陽子加速器施設(J-PARC)の両ミュオン利用施設を使って行われた。 ミュオン(ミュー粒子)によって物質内部の微小な磁場を解明する「ミュオン・スピン回転法」を使い、鉄・コバルト置換超電導体についてコバルトの濃度を0~15%まで変え磁気的な性質、超電導の性質を調べたところ、コバルト濃度が増大するにしたがって試料全体ではなく、一部分が超電導状態になり、コバルト原子の周りの一定領域だけが島状に超電導を示すことを発見した。 右の図は、その島状超電導状態を示したもので、反強磁性の「海」(ピンクの部分)の中にコバルトを中心とした超電導の「島」(ブルーの部分)ができる。電子は、この中でコバルト原子に近い領域では超電導状態に、離れると反強磁性状態へと姿を変えながら遍歴するという。 詳しくはこちら |