夢のコンピューターに一歩、量子ドット素子を作製
:物質・材料研究機構/理化学研究所

 (独)物質・材料研究機構は7月10日、(独)理化学研究所と共同で次世代の電子デバイス材料として世界的に注目されているカーボン材料「グラフェン」を使って量子コンピューターなどの基本素子になる量子ドットが2つ結びついた「2重結合量子ドット素子」を作製することに成功したと発表した。
 グラフェンは、炭素原子が蜂の巣状に結びついた炭素原子1層でできた超極薄のシート。このシートが積み重なるとグラファイト(黒鉛)に、筒状に丸まるとカーボンナノチューブになる。英国の研究グループがグラファイトから1層だけはがすことに成功してから注目され出し、このグラフェンを材料とするナノデバイス開発が活発化している。
 今回の成果は、3層のグラフェンからなる厚さ約1nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)のグラフェンシートに電子線と反応性イオンエッチングを使って最も基本的な量子集積回路である2重結合量子ドット素子を作ったもの。
 量子ドットは、かつては量子箱と呼ばれ、微小な空間に電子を閉じ込めた構造をいう。原子核の周りを電子が回っている原子のアナロジーから人工原子とも考えられ、電圧などで量子ドット内の電子の数やスピン(回転)状態を制御する新デバイスの提案・研究が世界中で活発化している。
 作製した2重結合量子ドット素子は、[1]電子を閉じ込める2つの近接する量子ドット、[2]量子ドットに電流を流すためのソース・ドレイン両電極、[3]量子ドットに閉じ込めた電子のエネルギー状態を制御するゲート電極、の3つの構造を全て同じ1枚のグラフェンシート上に形成したもので、2つの量子ドットの中の電子をゲート電極の電圧を変えることにより1個単位で制御することに成功した。
 単電子デバイスや夢の量子コンピューターに一歩近づいたわけで、今後の発展が期待される。

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