(独)物質・材料研究機構と(独)科学技術振興機構は6月15日、絶縁性セラミックスの3次元原子トモグラフィー(立体像撮影)に成功したと発表した。
セラミックス材料の3次元トモグラフィーは、電子顕微鏡を使って数10nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)程度の分解能で行うことも可能だが、今回得られたのは100万個程度の原子で構成される原子トモグラフィーで、原子レベルの分解能を持ち、nm領域の濃度分析も容易に行えるという点で、従来のトモグラフィー法とは異なる高精度のもの。絶縁性セラミックスである「安定化ジルコニア・スピネルナノコンポジット」の3次元原子トモグラフィーに成功した。
電気抵抗率が10億Ω・cmの先鋭な絶縁性セラミックス針の先端に高電圧をかけて波長343nmのフェムト(1,000兆分の1)秒レーザーを照射すると、原子のイオン化がレーザーと同期して起こることを見出し、この現象を用いて個々の原子の飛行時間測定と位置検出を同時に行い、3次元原子トモグラフィーの取得に成功した。
今回のような先鋭な針の先端に高電界をかけ、その先端から平板の検出器に放射状に飛行するイオンの飛行時間を測定して原子種を同定し、検出器上の座標から原子位置を測定することを「3次元アトムプローブ法」と呼ぶが、これまで絶縁性セラミックスには応用できないとされていた。その壁を破って応用できることを実証したのは、これが初めて。
今後、短波長レーザーを用いた3次元アトムプローブ法が、セラミックス材料の汎用ナノ解析法として発展するものとみられている。