免疫力を決定する分子を発見
:筑波大学/大阪大学/福島県立医科大学

 筑波大学は6月15日、大阪大学、福島県立医科大学との共同研究で、抗体の一種である「IgM」の受容体(レセプター)が、免疫力を決定する分子であることを明らかにしたと発表した。
 肺炎球菌やインフルエンザ菌などは、多糖類の厚い層で表面が覆われているため、免疫ができにくくなっている。日本では、毎年肺炎により約10万人が死亡しているが、その半数は肺炎球菌が原因であるとされている。さらに、これらの病原体に対してはワクチンも効きにくいことが問題になっている。しかし、なぜ多糖類の殻で表面が覆われていると免疫ができにくいのか、またワクチン(予防接種剤)も効きにくいのか、そのメカニズムは分かっていなかった。
 肺炎球菌などの病原体が感染すると、多糖類と結合しやすいIgM抗体ができる。抗体とは、抗原(生体内に入り反応を起こす物質)の侵入を受けると、その刺激で作り出されるすタンパク質のこと。IgM抗体は、病原体との結合が弱く、病原体を攻撃することはできないと考えられ、どのような働きをしているかは長年不明であった。
 研究グループは、2000年にヒトとマウスのIgMが結合する受容体の分子を、世界に先駆けて発見し報告した。
 さらに、IgM抗体の働きを明らかにするために、IgM受容体の遺伝子欠損マウスを作製した。このマウスに、多糖類をつけた抗原をワクチンとして投与すると、野生型マウスでは起きない強い免疫反応が観察された。この免疫反応の詳細を調べるために、7~11週間後(約100日後)に再度同じ抗原を投与すると、抗原を中和(無力化)する強力な抗体(IgG抗体)が多量に作りだされることが判明した。一方、野生型マウスでは、このような免疫反応やIgG抗体の産生はみられなかった。
 この研究によって、IgM受容体の働きを無くすことによって、多糖類の殻に覆われている病原体に対しても免疫ができ、ワクチン効果も増強することが示された。
 この研究成果は、6月15日の週の全米アカデミー紀要のオンライン版に掲載された。