高温度標準の新技術を実用化:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所(産総研)は4月15日、新しい高温度標準の実用化に成功、4月から1100 ~2500ºCまでの高温域の温度定点による校正サービスを開始すると発表した。
 温度定点とは、温度計の校正を行う温度標準器のこと。実用化に成功した温度定点は、産総研の独自技術である金属・炭素共晶を利用した温度定点で、1999年に次世代高温度標準として産総研が提案したもの。それ以降、世界の標準研究機関でも競って開発が行われてきたが、今回、世界に先がけて実用化に成功、校正サービスを開始することにした。
 素材産業における製鉄プロセスの高度化や次世代原子力発電の安全性確保などでは、高い精度の温度管理が必要だが、校正サービスで使われている温度定点の最高温度は1084.62ºCで、これ以上の高温域の温度計の精度管理に使える技術の開発が求められていた。
 1100ºC以上の温度定点がこれまで実用化できなかった理由は、純金属の融点・凝固点測定のために金属を入れるグラファイト(黒鉛)製のルツボが高温下で溶け出し、ルツボ内部の純金属を炭素で汚染してしまうためだった。そこで、産総研は、純金属の代わりに金属・炭素合金を用いることで炭素の汚染を防止できることを発案し、「金属・炭素共晶点」として、鉄・炭素共晶点からレニウム・炭素共晶点まで9種類の金属・炭素共晶について性能を実証した。校正サービスが行われるのは、鉄・炭素共晶点(1153ºC)、コバルト・炭素共晶点(1324ºC)、パラジウム・炭素共晶点(1492ºC)、白金・炭素共晶点(1738ºC)、レニウム・炭素共晶点(2474ºC)の5点で、約2500ºCまでの温度域をカバーする温度定点の校正サービス体系が完成した。

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