(独)産業技術総合研究所は4月14日、ディーゼル車の排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を低温で高効率に分解浄化する「電気化学リアクター」を開発したと発表した。
電気化学リアクターは、燃料電池のように固体電解質(固体の中にイオンを流す物質)を挟んで両側に配置された電極(陰極と陽極)において化学エネルギーを電気エネルギーに変える変換反応を行う装置。物質の持つ化学エネルギーから直接電気エネルギーを生成するため反応効率が高いが、技術的にはまだ問題点が多い。
今回開発した電気化学リアクターは、反応電極層が酸素イオンの導電性の高いガドリニア添加セリア(GDC)と電子伝導材料の複合体で、これに電気化学処理をすることで3次元ナノネットワーク構造を形成した。走査型電子顕微鏡で見ると、GDCの粒子が繋がった骨格構造の表面などに、直径数nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)のナノ細線状の電極が複雑に絡み合うように張り巡らされている。
新しいナノ構造化電極を持つ電気化学リアクターは、NOxに対して高い反応性を示し、高濃度(約20%)の酸素が共存するディーゼル排気ガス中のNOxを250ºC以下の低温でも90%分解できる。さらに排気ガスの浄化に必要なエネルギーも低減されるので、ディーゼル車などの燃費向上にも貢献できる。
同研究所では、さらに実用化に向けた検討を行い、エネルギー・環境問題に貢献できる技術として確立させたいとしている。
No.2008-15
2008年4月14日~2008年4月20日