次世代のディスプレイ「EC表示デバイス」」の多色化に成功
:物質・材料研究機構/科学技術振興機構

 (独)物質・材料研究機構(物材機構)と(独)科学技術振興機構は4月14日、エレクトロクロミック(EC)特性を示す有機・金属ハイブリッドポリマーを用いて、次世代のディスプレイ候補「EC表示デバイス」の多色化に成功したと発表した。ポリマー内に導入する2種類の金属イオンやデバイス構造を工夫することによって実現したもので、厚さは2mm。マイナス2.5V~プラス2.5Vの間で電圧を変えるだけで色が変わり、5種類の表示を表現できる。
 液晶、プラズマ、有機ELに続く次世代の表示ディスプレイの1つとして「電子ペーパー」が注目されている。電子ペーパーは、従来のディスプレイとは異なり、電源を切っても表示が続くため、省資源・省エネ型デバイスとして、将来、新聞などの紙(ペーパー)媒体の代わりになると期待され、多様な色を表現できる可能性を秘めたEC方式が電子ペーパーの有力候補に挙がっている。
 今回の成果は、物材機構が開発した電気を流すと色が可逆的に変わるEC特性を示す有機・金属ハイブリッドポリマーを使って多色表示できる20cm角ほどのEC表示デバイスを試作したもの。
 用いたポリマーは、有機分子と金属イオンがナノサイズで複合化、数珠繋ぎになっており、従来の有機EC材料と違って、高い繰り返し駆動安定性を持つ。研究者は、このポリマーを塗った薄いガラス透明電極2枚で固体電解質を挟んで、厚さ2mmの表示デバイスを作成した。デバイスは、単三電池2個で駆動でき、1秒以内に書き込み(発色)と消去(消色)を可逆的に繰り返せる。金属イオンの種類を変えたり、増やしたりすれば、より一層の多色化も可能という。
 紙媒体と競合する電子ペーパーを実現するには、紙に匹敵する薄膜化・軽量化が極めて重要な克服課題となる。今回の方式は、特別な装置を使うことなく、塗布という簡便な方法によってマルチカラーの薄層EC表示デバイスができるだけに「カラー電子ペーパー」実現に一歩近づいたといえる。

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試作したEC表示デバイス(提供:物質・材料研究機構)