(独)物質・材料研究機構と(独)科学技術振興機構は12月14日、生体分子・高分子などの成分解析や微量検出、触媒や電極表面の化学反応モニターなどに使われる高感度な金属シート増強赤外吸収センサー材料の新たな製造法を開発したと発表した。新製造法は、赤外吸収信号を実時間モニターしながら、金属ナノ薄膜を溶液中で2次元成長させるので、従来法より安く簡単に高感度材料を再現性良く素早く作れる。
nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)級の金属粒子周りへの電場集中効果で、その粒子近辺の分子振動の吸収信号が数十~数百倍強くなる「表面増強赤外吸収(SEIRA)効果」は、分子振動数を直接モニターするので分子種の同定や状態を知るのに適した現象として知られる。これまで、このSEIRA効果利用センサー材料の製作には、金属薄膜を半導体基板上に真空蒸着法で島状に成長させる方法が用いられてきた。しかし、この手法には、高価な真空装置が必要であり、作った材料のSEIRA活性度評価は製造中の“その場”では出来なかった。
今回、研究グループは、大きさが数十nmのシート状の金の微結晶をシリコン基板上に高密度に集積させて薄膜材料を作った。この際、基板の裏側から光を照射、その反射光の吸収シグナルを“その場”で実時間モニターし、金がバラバラの微結晶膜から、つながった連続膜に移り変わる寸前に膜の成長を止める方法を案出、赤外吸収強度の最適化に成功した。その結果、球状ナノ粒子の赤外吸収強度が1~2%なのに対して、新製法で製造した金属増強シートの赤外吸収強度は10~20%と大幅な感度増を実現した。
No.2007-49
2007年12月10日~2007年12月16日