(独)物質・材料研究機構、早稲田大学、大阪大学、半導体先端テクノロジーズ、筑波大学の共同研究グループは12月10日、次世代半導体の低消費電力化と高性能化を可能にする新技術を開発したと発表した。半導体の世界では、回路幅が32nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)の次世代半導体開発が進んでいる。新技術は、32nm世代以降のCMOS(相補性金属酸化膜半導体)用トランジスタの低消費電力化と高性能化に道を拓くもので、32nm、22nm世代の集積回路(IC)で顕在化すると心配されているトランジスタ動作のばらつきを低減する効果も期待できるという。
この開発では、トランジスタのゲート電極にルテニウム・モリブデン合金を用い、さらに炭素を加えることでゲート電極合金の結晶状態を制御、これによってトランジスタの最も大事な指標である閾値(しきいち)電圧(オン状態とオフ状態の境界を示す電圧値)の操作を可能にした。
MOS(金属酸化膜半導体)トランジスタのゲート電極と絶縁膜には、多結晶シリコンとシリコン酸化膜が使われてきたが、低消費電力・高性能化を求めて、絶縁酸化膜は厚さが1nmを切るほどにまでなり、絶縁膜として機能させるのが困難になってきている。そこで、少し厚くても実効的に同じ性能が得られる絶縁物が研究されている。ゲート電極も多結晶シリコンから金属に置き換えられようとしているが、電極の金属と絶縁膜の界面に出来る酸素欠損が大きな要因となって、閾値電圧調整が困難なのが問題だった。
今回、共同研究グループは、ルテニウム・モリブデン合金の組成を細かく調べ、ある割合の時にモリブデンが金属と絶縁膜の界面に偏在するのを発見、この現象を用いることで絶縁膜上の閾値制御性が大きく向上することが分った。さらに、この合金に対し1~3%炭素原子を添加することで、閾値制御性を失わずに、電極金属の結晶サイズを小さくすることが出来た。
この成果は12月11日、米国のワシントンで開かれたIEDM(国際電子素子学会)で発表された。
No.2007-49
2007年12月10日~2007年12月16日