高エネルギー加速器研究機構(KEK)、東京工業大学、科学技術振興機構は12月13日、結晶の原子配列が強力なレーザーパルスの照射で瞬間的に圧縮・破壊されて行く現象を100ピコ(ピコは1兆分の1)秒の短パルスX線を用いて観測することに世界で初めて成功したと発表した。この技術は、様々な材料の内部構造破壊の解明に重要で、衝撃や破損に強い材料開発に役立つと期待される。
研究グループは、硫化カドミウム単結晶の試料表面の同じ位置に、パルス幅8ナノ(ナノは10億分の1)秒のネオジムイオン入りのYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザーの光と、パルス幅100ピコ秒のX線を照射、試料がレーザー光で圧縮・破壊される過程をX線で観測した。1回のレーザー照射で、試料は壊れてしまうが、同一基板から切り出した別の試料に換え、レーザー照射とX線照射のタイミングを一定時間ずらしながら実験を繰り返すことで、圧縮から破壊に至る過程が連続して分るX線回析像を得た。この強力な短パルスX線発生にはKEKの放射光科学研究施設のX線ビームラインが使われた。
その結果、[1]レーザー光照射による衝撃波は試料中を音速の12倍の秒速4.2kmで伝わり、[2]この衝撃で試料はレーザー光の進行軸方向にだけ最大4.4%圧縮され、[3]その瞬間圧力は最大約4万気圧に達していることが初めて分った。
また、さらに詳細な解析から、衝撃圧力波が試料の裏面で反射する様子や、最大圧力に達した時には試料が結晶構造の変わる相移転寸前の状態になっていることなど、衝撃圧縮過程の詳しいメカニズムが明らかにされた。
No.2007-49
2007年12月10日~2007年12月16日