レアアース不要、高い圧電性能の新材料を開発
―窒化物として世界最高水準、製造も安価に
:産業技術総合研究所/村田製作所(2016年3月18日発表)

 (国)産業技術総合研究所は3月18日、(株)村田製作所と共同で高価なレア―スを使わずに窒化物として世界最高水準の性能を持つ圧電材料を開発したと発表した。窒化アルミニウムにマグネシウムとニオブを添加する製法で、安価に製造ができ、次世代の高周波フィルターへの応用が期待できるという。

 

■次世代の高周波フィルターへの応用が期待

 

 圧電は、圧力を加えると圧力に比例した表面電荷が現れる性質。アルミニウムと窒素の化合物である窒化アルミニウムは圧電材料の一つで、必要な電波だけを通し不必要な電波を遮断する性能に優れ、モバイル通信用の高周波フィルターなどに使われているが、今後の通信方式の進化に向けて圧電性能の一層の向上が求められている。

 このため、国内外で窒化アルミニウムをベースにした新圧電材料の開発が進められ、すでに窒化アルミニウムにレアアースのスカンジウムを添加すると圧電性能が飛躍的にアップすることが見つかっている。

 しかし、スカンジウムは、生産量が世界でも年間10t程度と少なく非常に価格が高い。そこでスカンジウム以外の元素の添加効果を調べた。試料は「三元同時反応性スパッタリング法」と呼ぶ方法で添加元素を同時に添加して作った。いくつかの添加元素の効果を調べたところ、マグネシウムとニオブを添加すると飛躍的に圧電性能が向上することが分かった。

 研究グループは、マグネシウムとニオブの添加量の関係など、圧力や温度、組成比などを変えて性能を調べた。その結果、マグネシウムとニオブの添加量合計が0.65のときに、スカンジウムを添加したときと同等の圧電性能を得た。これは、スカンジウムを含まない窒化物では、「現在報告されている中では世界で最も高い値」(産総研)という。

 研究グループは、今回開発した新圧電材料の内部構造解析を行い、高い性能を示すメカニズムの解明を行うとともに、他の元素の添加効果もさらに調べるとしている。

詳しくはこちら

図

左は、作製した圧電薄膜の断面の電子顕微鏡写真、右は、結晶構造の模式図(提供:(国)産業技術総合研究所)