原子核の荷電対称性、ラムダ粒子で崩れる
―ハドロン実験施設で世界初の発見
:東北大学/高エネルギー加速器研究機構ほか(2015年11月25日発表)

 東北大学と高エネルギー加速器研究機構(KEK)、(国)日本原子力研究開発機構などの研究グループは11月25日、原子核が持つ基本的な対称性である「荷電対称性」がラムダ粒子を加えることで大きく崩れることを世界で初めて発見したと発表した。

 

■これまでの予想覆す

 

 原子核を構成する陽子の数と中性子の数が入れ替わった原子核を鏡像核といい、鏡像核と元の原子核の間には、質量や構造が同じになる荷電対称性という性質がある。

 例えば陽子1個と中性子2個から成る3重水素原子核と、陽子2個と中性子1個から成るヘリウム3原子核は互いに鏡像核で、質量はほぼ等しく同じ構造を持っている。

 ラムダ粒子は、クオーク3つから成る陽子・中性子の仲間の粒子で、ストレンジ、アップ、ダウンのクオークから成る。すぐに崩壊するので通常の物質中には存在しないが、加速器で作って原子核に入れると、陽子・中性子とともに原子核の構成要素となる。ラムダ粒子を含む原子核をハイパー核と呼び、これまでハイパー核においても荷電対称性は成り立っていると予想されてきた。

 研究グループは今回、世界最強度の陽子ビームを生成できる大強度陽子加速器施設J-PARC(茨城県東海村)のハドロン実験施設を用いてハイパー核の荷電対称性を調べた。

 その結果、ヘリウム3原子核にラムダ粒子を加えたヘリウム4ハイパー核と、3重水素原子核にラムダ粒子を加えた水素4ハイパー核では、質量が大きく異なるという不思議な現象を発見、ラムダ粒子によって荷電対称性が大きく崩れることを見出した。

 原因については現在のところ分からないという。この謎はラムダ粒子と陽子・中性子の間の力を正しく理解することで解けるのではないかとしている。

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