変換効率11%の熱電変換モジュールを開発
―鉛テルライドをナノレベルで制御、7%のカベ突破
:産業技術総合研究所/米・ノースウエスタン大学ほか(2015年11月26日発表)

図

熱電変換モジュールの概略図(提供:(国)産業技術総合研究所)

 (国)産業技術総合研究所・省エネルギー研究部門は11月26日、鉛テルライドをナノサイズで制御することによって、変換効率11%の熱電変換モジュールを開発したと発表した。日本では、石炭、石油から生み出される一次エネルギーの60%以上が熱として捨てられているだけに、熱電変換の効率を高め、実用化することで新たな電気エネルギーが取り出せるとみている。

 

■5年以内の実用化目指す

 

 熱電変換は、2種類の材料を接合し、そこに温度差を与えると電圧が発生するゼーベック効果を利用した発電装置。産総研は、熱電変換の材料やモジュール開発から評価技術まで幅広く研究している世界でも珍しい機関として知られる。これまでは、熱電変換モジュールで7%の変換効率を超えることは困難だった。

 今回は米国ノースウエスタン大学とアルゴンヌ国立研究所と協力して、まず高温で焼き固めた鉛テルライドに、マグネシウムテルライドのナノ構造を埋め込み、高効率の熱電変換材料作りに成功した。ナノ構造によって熱の伝導を抑えたことで、電荷の移動に障害がなくなった。

 これに比較的相性のよい電極材料を鉄とコバルトで作り、摂氏300度から700度の高温帯の熱電性能を従来の約2倍へと大幅に高めた。

 一方、低温対策として100度付近で高い性能の出る一般的なビスマステルライドを付け加え、「二段型熱変換モジュール」を開発した。低温側の効率が改善、高温側を600℃、低温側を10℃としたときに、最大出力電力2.34W(ワット)、最大変換効率11%を達成した。

 二段型によってどこまで発電効率が改善できるかを模擬したところ、15%程度まで高められる見通しがついたことから、電極材料の境界面の電気抵抗の改善、長期耐久性や産業界での実証試験を行うなどして5年以内の実用化を目指す。さらに、毒性元素の鉛を銅に、希少元素のテルルを資源量の多いイオウなどへ代替化も進めている。

詳しくはこちら

関連記事(こちらこちら