環境省、(国)国立環境研究所、(国)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11月27日、3機関が共同で開発し打ち上げた温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)によるメタン観測の結果を発表した。それによると、人口密集地域や大規模な農業地域あるいは天然ガス・石油生産・精製地域での人為的な排出地域で周辺よりもメタン濃度の高いことが明らかとなった。
■中国内陸やパキスタン、インドの都市で高い濃度
メタンは、二酸化炭素(CO₂)に次ぐ温室効果ガスで、天然ガスの漏出、家畜の飼育、ゴミの埋め立てなどの人間活動から排出される「人為起源」のメタンと、湿地などで発生している「自然起源」のメタンとに区分される。その割合は人為起源メタン約6割、自然起源メタン同4割といわれている。
今回の発表は、平成21年6月から同24年12月までの3年半にわたる「いぶき」の観測データを解析し、アジア、北アメリカ、南アメリカ、北ユーラシアの4地域の人為起源メタンの濃度を推定した。
人為起源メタン濃度が最も高かったのは、中国の内陸都市の成都、重慶で、81.2ppb(1ppbは10億分の1)という最大値を記録。パキスタンのラホールが58.1ppb(最大値)、インドのカルカッタとバングラデッシュのダッカ54.0ppb(同)が続いている。
これらの都市は、いずれも農工業が盛んで人口密度の高いアジアの大都市だが、南米ブラジルの広大な領域にわたって耕作や畜産が行なわれている農業地帯や、天然ガス・石油の採掘地帯で天然ガスパイプラインが走る北ユーラシアのスルグート(ロシア)でもそれぞれ最大値42.6ppb、同35.0ppbという高い人為起源メタン濃度が観測されたとしている。
また、先進国アメリカも工業地帯で人口密度の高いカリフォルニア州のロサンゼルスは、最大値が33.7ppbに達しており、ニューヨークは22.0ppbだった。
「いぶき」のデータ処理から導かれた人為起源メタン量は、各種の排出カテゴリーに基づく統計量データなどから推定された数値とよく一致しており、今回の解析で、「いぶき」は人為起源メタン排出量の監視・検証ツールとして有効利用できる可能性があることが分かったとしている。