(国)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は9月11日、「S-520」型観測ロケット30号機を同日午後8時に同機構内之浦宇宙空間観測所(鹿児島・肝付町)から打ち上げと発表した。同観測ロケットは、正常に飛翔し計画通り打ち上げ55秒後に観測を開始、打ち上げから283秒後に最高点312kmに達して内之浦東南海上に落下、打ち上げは成功した。
■酸化物を蒸発させ、凝縮する粒子の成長を観測
今回の観測ロケット打ち上げは、「酸化物系宇宙ダストの核生成物過程の解明」を目指すもので、ロケットの飛翔による微小重力下で酸化物を蒸発させ、その後に凝縮する酸化物粒子が成長する過程を直接測定する。それにより地球やその他太陽系天体の材料となった微粒子が作られる初期状態の解明することが狙い。JAXA、北海道大学、東北大学、東海大学などが参加した。
太陽系天体の最初の生成粒子として最も有力視されているのがアルミナ。今回の測定では、ガス中の温度や濃度を非接触で同時観測を行う二長波干渉計を使い、最初の生成粒子がアルミナかどうかを検証。また、浮遊ダスト赤外スペクトルその場測定装置を用いて、アルミナが生成する成長過程での赤外スペクトル測定を行い、天体のスペクトル観測でのみ現れる特有のものがアルミナに由来するものかどうかを明らかにする。今後、各大学で詳しい解析が行われる。
S-520型観測ロケットはJAXA宇宙科学研究所が開発した単段式ロケットで、1980年に1号機を打ち上げている。全長8m、直径52cm、全備重量約2.1tで、重量150kgまでの観測機器類を約300kmの高度にまで打ち上げることができる。
今回のS-520型ロケット30号機の打ち上げで、JAXAの「平成27年度第一次観測ロケット実験」は終了となる。

酸化シリコンの蒸気から宇宙ダストが生成する様子(打上げから194秒後)。左の干渉縞の変化から、生成時の温度と濃度が決定でき、宇宙ダストの生成メカニズムを解明する。右の光っている部分が星に相当し、そこから発生する蒸気から微粒子(宇宙ダストの類似物)が生成している(提供:JAXA)