(国)産業技術総合研究所の物理計測標準研究部門は9月9日、ミリ波帯で優れた性能を持つ高周波伝送路(コプレーナ伝送路)を、印刷技術を活用して開発したと発表した。第5世代携帯電話や自動車通信に向けた電子デバイス(素子)の開発が進んでいるが、その性能を評価するための「標準伝送路」として使われる。
■電子デバイス性能評価の「標準伝送路」にも
銀ナノ粒子インクを用いたスクリーン印刷技術は、信号を伝えやすく、1度に多くのパターン形成ができる。この技術による高周波伝送路は、従来法に比べて製造コストを10分の1に削減し、製造時間は20分の1に短縮できた。信号損失が小さく、繰り返し接触しても劣化を少なく抑えることができた。
30GHz(ギガヘルツ)以上の高い周波数(ミリ波帯)になると、大容量のデータを高速で伝え、高精度で距離などが測定できるようになる。2020年の東京オリンピックに向けて第5世代携帯電話や自動車衝突防止レーダー装置の開発が進められているが、そのためのデバイスの高性能化は、信号の発信、受信、増幅や分配・切り替えに欠かせない重要な要素技術となる。
こうしたデバイスの品質性能を評価するためには、標準伝送路に接触させて精密な検査をするため、繰り返し使用しても伝送路が安定し、劣化しにくいことが必要となる。高性能で安価な伝送路は、新世代の通信技術の実用化にとって貴重な支えとなる。

印刷技術で作製したコプレーナ導波路。100GHzを超えるミリ波体電磁波の伝送が可能(提供:(国)産業技術総合研究所)