カメムシが共生細菌を選別する仕組みを解明
―消化管の狭窄部で共生細菌を選別し体内に取り込み
:産業技術総合研究所/北海道大学(2015年9月1日発表)

 (国)産業技術総合研究所と北海道大学の共同研究グループは9月1日、カメムシ類の消化管には雑多な細菌類の中から共生細菌だけを選別して体内に取り込む特異な仕組みが備わっていることを発見したと発表した。この知見をもとに腸内細菌の共生を阻害する方法を開発すれば、難防除害虫であるカメムシの防除が期待できるという。

 

■難防除害虫カメムシの防除に新たな知見

 

 研究グループは、大豆の重要害虫であるホソヘリカメムシを対象に独特な腸内共生のシステムを調べた。

 このカメムシの消化管の後半部分には多数の袋状組織が発達しており、「共生器官」と名付けられたこの部位に、バークホルデリアという細菌が共生している。共生器官の手前部に当たる消化管の中央付近は極端に狭まった構造になっていて、狭窄部と呼ばれているが、その機能は不明であった。

 そこで今回、大腸菌や枯草菌、シュードモナス・プチダといった一般的な土壌菌やバークホルデリアなどに対し、さまざまな食用色素を使って消化管における摂取物の流れを観察した。

 その結果、餌と共に取り込んだ雑多な細菌の中から共生細菌のバークホルデリアだけ狭窄部を通過させて共生器官に送り込み、他の細菌や食用色素はすべて狭窄部で止まることが分かった。これは極めて高度な細菌選別機構の発達を示しているという。食用色素は老廃物の排出器官や糞から検出された。このことから、消化管は狭窄部を中心に「食物を消化する前部」と「共生細菌を住まわせる後部」に機能分化していることが分かったという。

 また、バークホルデリアの変異株を作って共生の状態を調べたところ、べん毛形成に変異を持つ運動不全株は狭窄部を通過できないことが分かった。

 カメムシ類が共通して持つ、共生細菌の獲得に関わる特異な仕組みを解明したのはこれが初めてで、研究グループは今後、共生細菌の腸内選別の遺伝的基盤を解明したいとしている。

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図

ホソヘリカメムシ(左)と食用色素を吸わせたカメムシの消化管(右)。消化管中央にある狭窄部(黄色矢印)で食用色素は止まるが共生細菌は通り抜け共生器官に感染する(提供:(国)産業技術総合研究所)