大阪大学と(国)物質・材料研究機構、東京大学、京都大学の研究チームは9月4日、グラフェンのpn接合を境に左右に分かれる「電流ゆらぎ」現象を精密に観測することに初めて成功したと発表した。グラフェンは炭素原子がシート状に広がった原子1層の厚さの物質で、電子的に興味深い特徴を持つことが知られている。実験的に物性が解明されることによってグラフェンの理解が深まり、新たな応用につながるものと期待される。
■量子干渉素子などに応用も
pn接合は、半導体の中でプラスの正孔(p型)とマイナスの電子(n型)が接している部分で、電子機器では電流を一方向に流す整流作用や発光ダイオード、半導体レーザーなどとして実用化されている。
半導体であるグラフェンのpn接合領域に垂直に強い磁場をかけると、pn接合を通過できない電子と、確率的に通過してしまう電子が生じ、接合を境に電子が左右に分配されることを共同研究チームが実験で確かめた。これは「電流ゆらぎ」と呼ばれる雑音であり、pn接合がないとこの分配は起こらなかった。
これまでガリウム・ヒ素系半導体ではこの現象は知られていたが、グラフェンで実験的に確認されたのは初めて。電子を波として利用するさまざまな量子干渉素子への応用が期待される。