(独)産業技術総合研究所は4月24日、(独)農業環境技術研究所、沖縄県農業研究センターと共同で、大豆の害虫が殺虫剤分解能力を持つ細菌を自分の体内に取り込んで共生させ、殺虫剤を効きにくくしていることを発見したと発表した。 害虫が殺虫剤に耐える殺虫剤抵抗性を持つようになるのは、害虫自身の遺伝子に突然変異が起きるためと、これまでは考えられてきた。今回の発見は、その常識を覆す成果で、「共生細菌が関係していることを証明したのは世界で初めて」と、産総研はいっている。 研究に使ったのは、大豆の害虫として知られる「ホソヘリカメムシ」。このカメムシに世界中で広く使われている有機リン系の殺虫剤「フェニトロチオン」を分解するフェニトロチオン分解菌を感染させ、フェニトロチオンを分解しない非分解菌に感染したカメムシとの殺虫剤フェニトロチオンの効き方の違いを調べた。その結果、分解菌に感染したカメムシは、フェニトロチオンに接してから5日経過しても70~90%が生き残るのに対し、未分解菌感染のカメムシの生存率は、20%以下になることが判明したもので、「共生細菌の感染によってカメムシが殺虫剤抵抗性を獲得したことを明確に示している」(産総研)という。 フェニトロチオン分解菌は、土壌中に生息している「バークホルデリア」と呼ばれるカメムシ共生細菌の一種。研究グループは、今後この殺虫剤分解性バークホルデリアの全ゲノム(全遺伝子情報)解読を進める計画。産総研は、「共生微生物が害虫の殺虫剤抵抗性を高める機構の解明は、害虫の抵抗性発達を未然に防ぐための新規防除技術の開発につながる可能性もある」としている。
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大豆の害虫「ホソヘリカメムシ」(提供:産業技術総合研究所) |
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