受粉なしで果実ができる高糖度トマト変異体
―1万系統以上から1系統選抜し遺伝子を同定
:筑波大学(2015年8月27日発表)

 筑波大学は8月27日、同大学生命環境系の江面浩教授、有泉亨准教授、増田順一郎研究員が、受粉しなくても果実ができる単為結果性(たんいけっかせい)と呼ばれる性質を持った糖度の高い新規のトマト変異体を選抜、原因となる遺伝子を同定したと発表した。新品種開発に向けた画期的な親となる育種素材になると期待される。

 

■新品種開発へ画期的育種素材に

 

 単為結果は、単為結実ともいい、受精をともなわずに果実を着ける(着果)現象で、バナナ、パイナップル、ミカンなど多くの植物で見られる。

 トマトは、自家受粉植物だが、ハウスを使う施設栽培では受粉を補助する風や虫が排除されるので着果が悪くなる。そこでトマトの施設栽培では、マルハナバチの導入や、バイブレーターの使用、植物ホルモン処理などによる受粉促進が行なわれている。

 しかし、こうした受粉処理は、多大な労力とコストがかかるという問題を抱えている。このため、受粉なしで果実ができる単為結果性トマトの開発が求められ、長年にわたり研究されているが、単為結果性を持っていてもトマトが軟化し易い、裂果しやすいなどで大規模生産する普及品種にはなっていない。

 今回、江面教授らは、同大学の遺伝子実験センター(茨城・つくば市)が持っている草丈が15cm程度の「マイクロトム」と呼ばれている研究用矮小トマトの変異体集団の中から高糖度で、かつ旺盛な生育を示す新規の単為結果性変異体を発見した。原因となる遺伝子候補の同定も終えている。

 元の系統と違った性質を持った系統のことを変異体といい、同教授らは遺伝子実験センターが保有する1万系統以上のマイクロトムの大規模変異体集団を栽培し、単為結果性を示す系統を複数見つけ、それぞれの生育特性を詳細に解析して、糖度の高い系統1つを選抜したという。

 同大学では、「単為結果性と高糖度を持つことにより、作り手と消費者のニーズの両方に応える品種の実現が可能になった」とし、企業が保有する品種との交配や、他の果実への研究展開を計画している。

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