CNT集積化マイクロキャパシタを開発
―同等性能のアルミ電解コンデンサーの1000分の1に
:産業技術総合研究所(2015年7月7日発表)

 (国)産業技術総合研究所は7月7日、電子機器に欠かせないコンデンサーの代替素子としてカーボンナノチューブ集積化(CNT)マイクロキャパシタを開発したと発表した。ナノメートル(nm、ナノは10億分の1)単位の筒状炭素分子を利用、広く使われているアルミ電解コンデンサーと同等の性能を1000分の1の超小型素子で実現した。今後は企業とも連携して量産化技術の開発を進め、電子機器の一層の小型化につなげる。

 

■電子機器小型化へ量産化技術の開発進める

 

 電子機器はトランジスタやインダクターなど電子回路を構成するさまざまな部品を小型化することで発展してきたが、コンデンサーだけはこれまで小型化が難しかった。このため近年は、直径が0.4~0.5nm、長さが1~数十nmのカーボンナノチューブを用いてコンデンサーを小型化する試みが進められていた。

 産総研は今回初めて、集積回路の製造技術を用いてシリコン基板上にカーボンナノチューブによる微細なキャパシタをたくさん作ることに成功した。実験では、縦8mm、横10mmのシリコン基板上に100個のCNTマイクロキャパシタを作製、直列に接続することに成功した。

 マイクロキャパシタが1個だけでは1V(ボルト)までしか電気を蓄えたり放電したりできないが、100個を直列につないだことで100Vという高電圧でも動作することを確認した。また、直径4インチ(約10cm)のシリコン基板上に4700個のCNTマイクロキャパシタを集積化することにも成功、量産化の可能性を示すこともできたという。

 開発したCNTマイクロキャパシタは、既存のキャパシタや電池、アルミ電解コンデンサーなどの素子に比べて、電気を充放電する際の単位体積当たりの出力やエネルギー密度は同等以上の性能を持つという。特に広く使われているアルミ電解質コンデンサーに比べると、体積は1000分の1で同等の性能を発揮することがわかった。

 産総研は今後、集積度や電極のデザインによって作動電圧や出力、充放電速度などをどこまで幅広く制御できるかを明らかにしながら量産化技術の開発を進める。さらに電子機器関連の産業界を対象にニーズ調査を進め、幅広い用途の開拓にも取り組む。

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図

左上は、100個を直列接続して集積化したCNTマイクロキャパシタ。左下は、100V充放電動作の実証。右は、4インチシリコンウエハー上に4700個を集積化したCNTマイクロキャパシタ(提供:(国)産業技術総合研究所)