(独)産業技術総合研究所は6月21日、高純度の単層カーボンナノチューブ(単層CNT)を電極にしたキャパシタ(コンデンサー)を試作、これまでの活性炭電極キャパシタより高い電圧で安定動作するのを確認したと発表した。
試作キャパシタは、4Vで動作し、1,000回の充放電を繰り返した後の静電容量の減少率は3.6%に過ぎず、将来、小型軽量で高出力が必要な携帯電話やモバイルパソコンなどへの応用が期待される。この研究は、(独)科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業の一環として行われた。
キャパシタは、電気エネルギ-を直接物理的に蓄えられる寿命の長い高出力のデバイスだが、電極に活性炭を使った従来型は電極を作る際の結合剤や活性炭の不純物などの関係で3V以下の電圧しかかけられず、寿命も短いのが問題で、長寿命、高性能な電極を用いたキャパシタの開発が求められていた。炭素純度の高い単層CNTの合成法「スーパーグロース法」を開発した同研究所は、同法を用いたキャパシタ電極作りに挑戦した。
今回、電極にした単層CNTは、スーパーグロース法で合成したものを特別な処理なしで使い、導電性を改善して充放電を助ける金属集電体付きのもの、無しのものを試作して活性炭電極の従来型と性能を比較した。その結果、単層CNTキャパシタは、いずれも0~4Vで安定した動作を示し、単位重量当たりの静電容量も内部電気抵抗も従来型より優れていた。1,000回の充放電テスト後の静電容量減少率は、従来型の46%に対して、集電対の有無にかかわらず、僅か3.6%だった。
単層CNT電極を用いると、重量当たりエネルギー密度では市販の鉛二次電池と同程度のデバイス実現の可能性があり、集電体を使わないキャパシタは軽いだけでなく、構造が簡単なので、製作工程を簡略化できるメリットもある。
No.2010-24
2010年6月21日~2010年6月27日