鉄系超伝導体に亜鉛添加で伝導対破壊を確認
―鉄系超電導発現のメカニズム解明に一歩
:物質・材料研究機構/ルーヴェン・カトリック大学(ベルギー)(2015年7月9日発表)

 (国)物質・材料研究機構(NIMS)は7月9日、鉄系超電導体に混ぜた微量の亜鉛元素が、超電導に不可欠な電子のペアを破壊することを確認したと発表した。ベルギーのルーヴェン・カトリック大学の研究チームとの成果で、鉄系超電導を起こすメカニズムの解明につながる一歩を示した貴重な成果とみている。

 

■高性能な超電導材料の開発への貢献期待

 

 超電導は低温下である種の物質の電気抵抗がゼロになる現象。このうち鉄系超電導体とは、東京工業大学の細野秀雄教授らが2008年に発見した鉄、ヒ素を含む化合物を指す。銅系超電導体に次いで高い温度で超電導となる物質として注目されている。しかし超電導の発現のメカニズムは不明のままだった。

 鉄系超電導体に亜鉛を微量添加していくと、それに応じて超電導になる温度が低下することは知られていたが、正確な観測が難しかった。研究チームは3%の亜鉛を添加した極細の鉄系超電導体(断面直径約100nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m))の結晶を作った。冷却して電圧と電流の関係を測定したところ、規則的なステップ状に超電導転移を観測した。亜鉛添加により超電導領域が大幅に狭まっていることが示唆されたという。

 超電導状態では、2つの電子が対を組んで運動するために、これを電子対と呼ぶ。ここでは亜鉛元素が通り道を狭めることで電子ペアの動きを妨げ、局部的に破壊していることを確認した。超電導の破壊の研究がさらに進めば、それを避ける方法の解明にも見通しがつき、高性能な超電導材料の開発に結びつくものと期待される。

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