気象庁の気象研究所は7月8日、研究用として同研究所(茨城・つくば市)内に設置した次世代のレーダー「フェーズドアレイレーダー」の運用を同日から開始したと発表した。
現在使われているレーダーは、正面からしか電波(レーダー波)の送受信ができない。そのため、アンテナのいわゆる“首振り”が必要で、全天を探査するのに時間がかかるという弱点がある。
一方、気象の分野では、急速に発生・発達する積乱雲によって生じる竜巻・局地的大雨などの突発的な現象を十分観測できるようにするため、高いスキャン(走査)性能を持つレーダーによる超高速観測技術の導入が求められている。その有力候補として期待されているのがフェーズドアレイレーダー。
フェーズドアレイレーダーは、平面上にアンテナ素子を多数配列し、それぞれの電波発射タイミングの制御によってアンテナの首振りを行わず高速でスキャンできるようにした新方式のレーダーで、10〜30秒の超高速スキャンが行なえる。
新レーダーは、7月8日、無線局の免許を取得したことから研究専用に限定しての運用を開始したもので、半径60km圏内の積乱雲やそれからもたらされる局地的大雨、竜巻などを詳細に観測することができる。
同研究所は、このフェーズドアレイレーダーを用いて局地的大雨や竜巻などのメカニズムの解明を進めるとともに、その監視・予測技術の高度化に取り組む計画。