(国)物質・材料研究機構は5月18日、同機構が編集する国際的な材料科学誌「STAM」に超電導物質の探索研究で超電導を示さなかった “失敗例”も含む研究結果を公開したと発表した。成功例とともに失敗例も共有することで、世界的に同じ失敗を繰り返さずに超電導研究を効率よく推進する狙いだ。
■「世界中で無駄な努力を避け、研究を推進」
「STAM」はインターネットを通じてだれでも無料で購読できるオープンアクセス誌で、「Science and Technology of Advanced Materials」の略称。
(独)日本学術振興会の最先端研究開発支援プログラムの一環として、東京工業大学細野秀夫教授を中心に同機構や京都大学などが2010年に共同研究プロジェクトを立ち上げ、4年間にわたって新しい超電導物質の探索を進めてきた。今回公開したのは同プロジェクトで研究対象にしたもので、超電導を示さなかった700種の物質を含む1000種のリスト。
細野教授によると、今回の論文は超電導を示さなかった物質のリストを含む「おそらく初の論文」とし、公開した理由については「世界中で無駄な努力を避け、超電導分野の研究を推進したいからだ」と話している。
超電導はある種の物質を極低温に冷やすと突然電気抵抗がゼロになる現象。20世紀初めに絶対零度(0K、零下273度)に近い液体ヘリウム温度で水銀の超電導現象が発見され、1986年にはより高い温度の高温超電導物質が発見された。
高温になるほど使いやすくなるため、それ以降、新物質の探索が世界的に注目されている。細野教授らのプロジェクトでも、液体ヘリウムよりはるかに使いやすい液体窒素温度の77K(零下約196度)以上の温度で超電導になる新物質の発見を目標に掲げていた。