電子とレーザーを衝突させ、高輝度X線を発生
―次世代のX線源、ガンマ線源の開発に向け前進
:高エネルギー加速器研究機構/日本原子力研究開発機構(2015年4月27日発表)

 高エネルギー加速器研究機構(KEK)と国立研究開発法人日本原子力研究開発機構は4月27日、衝突確率の極めて小さい電子ビームとレーザービームとを、高密度でかつ非常に高い頻度で衝突させる技術を開発し、エネルギーのそろったX線ビームを発生させることに成功したと発表した。これまでになく強いガンマ線や、これまでになく明るいX線を放出する次世代の光源の開発に結び付く成果という。

 

■核物質の非破壊検知などが可能に

 

 電子ビームとレーザービームを衝突させてX線やガンマ線のビームを放出させる方法をレーザー・コンプトン散乱(LCS)という。レーザー・コンプトン散乱を実現すると、現在は大型の放射光施設で作り出している高輝度のX線ビームを小型の施設で作れるようになったり、これまでには無いエネルギー可変型の大強度ガンマ線源を作り出せたりする。

 共同研究グループは、超電導加速器を本体部とするエネルギー回収型リニアック(ERL)装置と、高反射率鏡でレーザーを閉じ込めるレーザー蓄積装置とを組み合わせて用いると、レーザー・コンプトン散乱の実現のカギとなる電子ビームとレーザービームの高密度かつ高い頻度での繰り返しの衝突が可能になることに着目、今回、高エネルギー加速器研究機構のERL試験加速器を用いて衝突実験をした。

 その結果、電子ビームとレーザービームを微小スポットで、1秒間に1.625億回という非常に高い頻度で衝突させることができ、エネルギー10keV(キロ電子ボルト)級のほぼ単色のX線ビームの発生に成功した。

 これは新光源の基盤技術となる成果で、これを手掛かりに今後、核物質の非破壊検知などが可能な大強度ガンマ線源や、生体細胞の高分解能イメージングなどのための高輝度小型X線源の開発が期待できるとしている。

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図

レーザー・コンプトン散乱の原理。左から光速近くまで加速した高エネルギーの電子が飛来し、右から来たレーザーと衝突。レーザーは電子との衝突によって反対方向に散乱され、電子からエネルギーを得てX線またはガンマ線となる(提供:高エネルギー加速器研究機構)