
人工鉱物コルーサイトの結晶構造。 立方格子中に66個もの原子が含まれるため複雑である(提供:産業技術総合研究所)
(独)産業技術総合研究所は10月6日、広島大学と共同で400℃程度の中温域の熱を高い効率で電気に変えることができる新熱電変換材料を開発したと発表した。熱を直接電気に変換できる熱電変換材料による「熱電発電」は、地球温暖化ガスを排出せず、加えて機械的な可動部が無く長寿命・静音・無振動なことから、これが実用になれば未利用熱エネルギーや自然熱エネルギーの利用が一気に進むと期待されている。
■変換効率は6~7%
熱電変換の中でも近年、世界的に注目されているのが自動車から放出されている膨大な量の400℃前後の中温廃熱を利用する熱電発電。しかし、この程度の中温域の熱を直接電気に変えることができるこれまでに知られている熱電変換材料は、有毒元素とレアメタル(希少金属)を含むため、埋蔵量が多く毒性の低い低環境負荷の元素からなる新たな熱電変換材料の開発が課題となっている。
新熱電変換材料は、産総研と広島大の研究グループがそれに応えるべく開発したもので、天然鉱物の一種「コルーサイト」と同じ結晶構造を持つ人工鉱物。埋蔵量が豊富で低毒性の銅、スズ、硫黄が主成分。レアメタルをごくわずかしか含まないことから、研究グループは「レアメタルレスの熱電変換材料といえる」と言い切っている。
研究グループは、原料元素を1,000℃以上で反応させて得た新熱電変換材料を高温で加圧焼結した高密度試料で熱電変換効率6~7%を記録したとしている。
産総研と広島大は、熱電変換効率をさらに上げて「環境にやさしい鉱物熱電変換システムを世界に先駆けて試作する」といっている。