マメ科植物の根粒数、調節因子の新物質発見
―タンパク質「NIN」が根粒の形成と抑制とに関与
:農業生物資源研究所(2014年9月23日発表)

 (独)農業生物資源研究所(生物研)と自然科学研究機構の基礎生物学研究所は9月23日、大豆などマメ科植物が大気中の窒素を栄養として利用する根粒の形成を巧みに制御している物質を発見したと発表した。この物質は根粒形成へのエネルギーの過剰消費を避けながら、植物全体が健全に成長するために重要な役割を担っているとみられる。農作物の効率的な栽培技術に応用する可能性も開けると期待している。

 

■省エネルギーシステムの中心的因子

 

 発見したのは、生物研・植物共生機構研究ユニットの林誠ユニット長と自然科学研究機構・基礎生物学研究所の川口正代司教授、征矢野敬研究員の研究グループ。マメ科植物は窒素肥料分がない荒れ地でも育つ。これは大気中の窒素を有機物に変える根粒菌が根にできるこぶ状の根粒に共生、窒素分を植物が利用できるようにするためだ。

 根粒の数は光合成をする葉と根の間である種の信号をやり取りして制御されていると考えられているが、研究グループはその信号の担い手が「NIN」と呼ぶタンパク質であることを突き止めた。特定の遺伝子に結合して制御する転写因子として働き、根粒の形成と抑制の両方にかかわっていることが分かった。

 マメ科のミヤコグサを用いた実験で、NIN転写因子を根に過剰に作らせたところ、根粒菌が感染していなくても根粒と似た構造が根にできた。一方、根粒菌の感染による根粒形成は著しく抑制されるなどの結果が得られた。

 根粒菌が感染すると、それが刺激となって根にNIN転写因子が作られ、根粒形成が促される。同時に別の遺伝子が活性化されて信号役の物質が作られる。これが葉に送られて再びその信号が根に送り戻される。この信号を受けた根はNIN転写因子の産生を抑制し、過剰な根粒作りを停止するという仕組みだ。

 根粒菌が感染してからこの信号が根から葉へ、さらに葉から根へ送り戻されるまでに3日程度必要と考えられている。研究グループは、この時間間隔があるために最初の根粒菌の感染によって根粒が形成されながら、次にできる過剰な根粒の形成は抑制されるという。

 植物は限られたエネルギーを無駄に消費しないように進化してきたが、「その省エネシステムの中心的な因子の一つがNINであり、NINの発現量の変化が根粒着生数のバランス制御に重要」と研究グループは話している。

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