1,000兆分の1秒の電子スピン捉える顕微鏡を開発
―走査トンネル顕微鏡とフェムト秒レーザーを活用
:筑波大学(2014年6月30日発表)

 筑波大学は6月30日、1,000兆分の1秒の世界が見える顕微鏡を開発したと発表した。原子1個を見ることができる走査型トンネル顕微鏡(STM)と、1,000兆分の1秒のパルス光を発するレーザー技術を組み合わせ、電子の磁気的性質の元になっているスピン(自転)の運動をとらえることができる顕微鏡を世界で初めて作製した。電子の電気と磁気の両方の性質を利用する今後のスピントロニクスの研究開発で重要な役割を担うことが期待されるという。

 

■歳差運動の様子を調べることにも成功。

 

 筑波大学は4年前の2010年に、フェムト秒(1,000兆分の1秒)の時間分解能を持つ超短パルスレーザーと、ナノ(10億分の1)スケールの空間分解能を持つSTMとの組み合わせを可能とする技術を開発し、極微世界の超高速現象の観察に道を開いた。

 研究チームは今回、これにスピンの情報を得られる機能を追加し、スピントロニクスの研究開発の道具としての応用を可能にした。レーザー光でスピンの状態を操作し、その変化をSTMでとらえるようにしたもので、半導体素子の主要な構造である量子井戸の中で、レーザーにより向きをそろえた電子のスピンが1,000億分の1秒程度の時間で乱れていく様子を直接とらえることに成功した。

 また、電子スピンが磁場の周りを回転する、いわゆる歳差運動の様子を調べることにも成功した。

 今回の新技術実現により、調べたい場所で、原子構造である原子の並び方を観察しながら、その同じ場所でスピンの超高速の運動を調べることができるようになった。また、光を照射することで起こるいろいろな現象を調べることもできることから、スピントロニクスはもとより、他の科学技術領域での貢献も期待されるとしている。

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