(独)産業技術総合研究所は7月2日、微細トランジスタの不純物濃度分布を高精度に測定する手法を開発したと発表した。濃度分布測定時に試料内部に流れてしまう電流の影響を計算機でシミュレーションし、取り除けるようにした。ナノメートル(nm:10億分の1メートル)スケールの不純物濃度分布を精度高く測れることから、次世代トランジスタの開発への貢献が期待できるとしている。
■ナノレベルで計測
トランジスタの超微細化に伴い、半導体内部に注入する元素(不純物ドーパント)の高精度な制御が必要とされている。それには高い空間分解能で不純物濃度分布を測定することが不可欠で、ここに原子1個を観察可能な走査型トンネル顕微鏡(STM)の活用が浮上している。
STM先端の探針と半導体試料の間に流れるトンネル電流は不純物濃度を反映するので、STMを利用すれば原理的に探針走査位置の不純物濃度分布を測れる、というわけ。ところが、測定に際して探針と試料間に電圧をかけるため、その電圧や、試料内部を流れるトンネル電流の影響を受け、正確な測定ができないという問題を抱えている。
研究チームは今回、こうした影響、なかでも探針・試料間に流れるトンネル電流が試料内部にも流れる影響をコンピュータシミュレーションで補償する技術を開発し、高精度な測定を可能にした。
産総研は、このシミュレーション技術を半導体デバイス開発者やSTM測定者に提供するとともに、つくばイノベーションアリーナナノテクノロジー拠点や産総研スーパークリーンルーム産学官連携研究棟で共用インフラとして活用できるようにするとしている。