(独)産業技術総合研究所と(株)日本ウォーターソリューションは6月25日、熟練工の手間を5分の1に減らせる水道管漏水検査技術を開発したと発表した。漏水検査器による1次調査と熟練工による2次調査の間に、人工知能(AI)の手法を用いた学習型の異音解析技術を導入し、漏水の疑われる箇所を高い精度で絞り込む。高齢化などのよる熟練工の減少対策や、漏水率が極めて高い東南アジア諸国の水道の維持管理への貢献などが期待できるという。
■AIの手法を導入
漏水の検知は現在、巡回員が水道メーターに音響式の検査器を接触させて漏水音の有無を調べる1次調査と、1次調査で漏水が疑われた箇所に熟練工が出向き、音聴棒(細い金属棒)などを使って詳細に検査する2次調査から成っている。
1次調査では周囲の雑音などの影響で漏水音ではない、いわゆる漏水疑似音が含まれていることが多く、熟練工の工数の増大につながっている。
今回開発したのは漏水音と漏水疑似音を高い精度で判別する技術。何が異常音であるかを人間が決めてコンピュータにインプットしておくのではなく、コンピュータにあらかじめ通常の正常音の範囲を学習させておき、これに熟練工の判断事例を加え、異常音を判別させるようにした。その際、音の特徴量の算出方式に新たな工夫を加え、学習しやすくした。
実際の2次調査データから無作為抽出した198件を対象に新技術の検証実験をしたところ、真の漏水はこのうちの28件だったのに対し、機械は38件を漏水であり、160件は漏水でないと判定した。つまり198件中160件を2次調査対象から除外できると判定したもので、熟練工の手間を約5分の1に減らせることになるという。
ただ、その一方で微小漏水が起きていた5件の見逃しがあった。漏水の初期で漏水音が小さかったためで、判定の仕方に問題はないとみているが、研究チームは今後誤判定低減のための改良を加え、平成27年度中に製品化させたいとしている。