出力5倍のアルミ溶湯加熱用ヒーターを開発
―効率よく熱伝導、省エネ、コスト削減に効果
:産業技術総合研究所/ヤマト(2014年6月23日発表)

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左は、開発したアルミニウム溶湯加熱用の浸漬ヒーター、右は、溶湯に浸漬中の様子。従来は3本のヒーターが必要であったが、開発したヒーター1本で加熱可能(提供:産業技術総合研究所)

 (独)産業技術総合研究所は6月23日、産業用ヒーター関連の(株)ヤマトと共同でアルミニウム製品の鋳造に必要な溶湯加熱用の高出力ヒーターを開発したと発表した。金属のアルミニウムを溶けた状態に保つためのヒーターを従来の5倍に高出力化することに成功、これまで3本必要だったヒーターの本数を1本で済むようにした。金属鋳造産業の設備コストの削減や省エネルギー化に役立つ。

 

■発熱体の過熱・断線を解消

 

 アルミ鋳造では、アルミが高温で融けた溶湯の状態に保つため、セラミックスのチューブ内に入れた電気ヒーターを溶湯内に浸漬する方法が普及している。

 今回、窒化ケイ素セラミックスのチューブ内に入れた発熱体と、溶湯に直接触れて発熱体の熱を伝えるチューブの間の熱伝達を良くするために、チューブ内に充てんする高熱伝導性のセラミック粒子(フィラー)の種類や粒度配合、充てん法などを最適化した。この結果、粒子同士の接触による熱移動の経路が確保され、熱伝達率は従来の5倍に向上、発熱体からアルミ溶湯へ熱が効率よく伝わるようになった。

 2kWの出力が必要な場合、従来のヒーターでは発熱体の温度を使用限界の950℃程度まで上げる必要があるが、新しいヒーターでは発熱体の熱が効果的に溶湯に伝達されるために発熱体の温度は800℃以下に抑えられた。従来ヒーターでは、高い出力を得ようとすると、発熱体が過熱して断線するなどの問題があった。

 ヒーターを長期間使用するには発熱体の温度を850℃程度に抑える必要があるが、この条件でヒーター出力を比較したところ新ヒーターは従来ヒーターの5倍に高出力化していることがわかった。

 一般的な大きさの炉で500kgのアルミ溶湯の温度を1時間で700℃から710℃に上げるには、従来のヒーターを使用限界の発熱体温度950℃で使っても最低3本必要だった。新ヒーターなら、850℃程度の安全な発熱体温度で使用でき、1本だけで済むという。また、ヒーターや周辺設備や、ヒーターを出し入れする開口部からの放熱損失も約3分の2に削減できるという。

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