(独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は3月12日、静かな超音速機の実現を目指して昨年8月に実施した試験機による飛行試験失敗の原因究明の調査結果を発表した。飛行制御のためのプログラムが不完全で機体の振動を制御しきれなくなったことが原因という。今後、プログラムの改善などの進展具合を見ながら、再試験するかどうかを判断する。
■風洞模型と試験機との形状相違が響く
JAXAは、試験が失敗した直後に調査・対策チームを立ち上げ、外部有識者の意見も聞きながら原因究明を進めた。その結果、飛行異常の原因を①飛行制御プログラムで計算された機体の動きが実機と大きく違った、②機体の姿勢制御の安定余裕度の不足――の2項目に特定した。
このうち計算と実機の動きが食い違ったのは、風洞試験の際に機体模型を固定する支持装置によって胴体後部の形状が実機と異なり、それが実機の運動特性に与える影響を十分考慮しなかったためとしている。今後の対応策については、姿勢制御に十分な安定余裕をもてるよう飛行制御プログラムの改善を進めるとともに、すでに機体の空力特性の見直しを終えたとしている。
超音速機の開発では、音速を超えるときに発生する衝撃波が地上に大きな衝撃音をもたらすことが問題とされている。このためJAXAは、衝撃音を小さくする研究の一環として全長約8m、重さ約1tの試験機を試作。昨年8月に気球に吊るして高度3万mまで上げてから落下、滑空させて超音速になったときの衝撃音を計測する実験をスェーデンで実施したが、予定の飛行経路から外れて失敗、試験を中断した。
JAXAは今後、再試験の可否を判断することにしているが、再試験を実施して来年中に衝撃音低下のための技術を提供できれば、国際民間航空機関(ICAO)が検討している衝撃音の基準策定に十分貢献できるとみている。