(独)農業・食品産業技術総合研究機構の畜産草地研究所は7月25日、稲の籾(もみ)や葉、茎を用いて作られる稲発酵粗飼料用の稲収穫時に地面から15cm以上の高さで刈り取ることで飼料中に含まれる放射性セシウムの濃度をかなり低減できると発表した。飼料の生産量への影響は比較的少なくて済むため、原発事故による汚染地域で稲発酵粗飼料を生産・利用する畜産農家での活用を期待している。
■株元に近いほど高い汚染濃度
畜産草地研究所の研究グループが、福島県農業総合センター、栃木県県畜産酪農研究センターと共同で稲の収穫方法と飼料の放射性セシウム濃度の関係を調査した結果分かった。
稲発酵粗飼料は稲の籾などを発酵させて貯蔵できるようにした飼料で、水田の有効活用や飼料自給率向上に役立つため、南東北から北関東の6県で約5,000ha(ヘクタール、1haは1万m2)にわたって発酵飼料用に稲が栽培されている。
昨年実施したモニタリング調査では、飼料1kg当たりの放射性セシウム量が暫定許容値の100ベクレルを超えたものが460点中に1点しかなかったが、収穫時の土壌混入によって汚染度が上がることも懸念された。
そこで研究グループは、稲を刈り取る条件と汚染濃度の関係を調べたところ、地面に近い株元で刈り取るほど汚染濃度が高いことがわかった。地面から8cmで刈り取ったときの放射性セシウム濃度を100%とすると、16cmでは76%、24cmでは64%だった。
一方、稲の刈り取り量(乾物収量)は8cm高くするごとに5%程度しか低下せず、最終的に得られる飼料の量への影響は比較的少ないこともわかった。
研究グループは「放射性セシウム抑制には刈り取り高さを高く設定し、水田の土壌表面に近い茎葉部分を刈り残すことが有効」として、15cm以上の高さで刈り取るよう提案している。