水素不純物が絶縁劣化起こすメカニズム解明
―セラミックコンデンサー、放出電子が引き起こす
:高エネルギー加速器研究機構/日本原子力研究開発機構/ J-PARCセンター

 高エネルギー加速器研究機構と(独)日本原子力研究開発機構、J-PARCセンターは7月22日、セラミックコンデンサーの主要な原料であるチタン酸バリウム中の水素不純物がコンデンサーの絶縁劣化を引き起こすメカニズムを解明したと発表した。コンデンサー製造過程から水素混入の可能性を排除すればコンデンサーの性能向上が期待できるという。

 

■性能向上へ水素の混入抑制が重要

 

 チタン酸バリウムを主原料とする積層セラミックコンデンサーは、パソコンやスマートフォンをはじめとする各種電子機器に多数使用されている基本部品。その内部電極に用いられるニッケル電極の酸化を抑えるため、チタン酸バリウムと内部電極との一体化焼成は低濃度の水素を含んだガス中で行われている。
 その際、チタン酸バリウム結晶中に微量の水素不純物が取り込まれたりして結晶の格子欠陥を引き起こし、絶縁劣化の要因になることが知られている。
 研究チームは今回、水素を模擬できる正ミュオン(プラスの電荷をもつミュー粒子)をJ-PARCのビーム施設を利用してチタン酸バリウムの単結晶に打ち込み、ミュオンスピン回転・緩和法と呼ばれる手法を用いて、打ち込まれた正ミュオン周辺の電子状態を調べた。  
 その結果、結晶に取り込まれた正ミュオン(水素)は電子を放出しやすく、この電子が結晶中を動き回り絶縁性を低下させることをつかんだ。
 積層セラミックコンデンサーのさらなる性能向上には、この電子放出要因となる水素の混入を抑えることが重要としている。

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