(独)産業技術総合研究所と単層CNT融合新材料研究開発機構は7月23日、炭素でできた微細な筒状物質であるカーボンナノチューブ(CNT)と銅を組み合わせ、銅の100倍まで電流を流せる複合材料を開発したと発表した。電気伝導度は銅と同程度で高温に優れ、密度が小さく軽い。電子デバイスの小型化、高性能化に突破口を開く新たな配線材料がつくれたとしている。
■軽量でデバイスの小型、高性能化に貢献
新配線材は、高純度な単層のCNTを効率的に作れるスーパーグロース法と呼ばれる方法で合成した単層CNTを銅でメッキしたもの。スーパーグロース法で垂直方向に成長した単層CNTを倒して圧縮し、まず板状のCNT構造体にする。これに有機系溶液電気メッキで銅の成長の核となる銅関連粒子を構造体内部に形成させ、できた成長の核の酸化銅を水素で還元して銅にした後、水溶液電気メッキで銅を構造体内部に充填させ、銅とCNTの均一な複合体を得る。
この配線材に流す電流密度を上げ、抵抗率の上昇による破断を調べたところ、現行の配線材の銅や金が破断する電流密度の約69倍まで耐えた。電流容量は銅が6.1×106A/cm2、金が6.3×106A/cm2だったのに対し、CNT銅複合材のそれは600×106A/cm2で、銅、金のおおよそ100倍あった。
電気伝導度の測定実験では、常温でのそれは銅に匹敵する値だったが、温度上昇に伴う電気伝導度の低下は銅に比べて小さく、80℃では銅の電気伝導度を上回り、227℃では銅の2倍であった。
CNT銅複合材は体積当たり45%のCNTを含んでおり、密度は銅、金に比べてかなり小さく、デバイスの小型・軽量化に適合する。
研究チームは今後大面積製造プロセスの開発と配線形状の作成を目指すとともに、企業と連携して用途開拓を進めたいとしている。

CNT銅複合材料作製法の模式図(上)とCNT銅複合材料と銅の温度による電気伝導度変化の比較。銅に比べて、高温でも電気伝導度が保たれる(下)(提供:産業技術総合研究所)