機能性樹脂「ニトロキシドポリマー」の新製法
―過酸化水素用い安全で環境負荷も軽減
:産業技術総合研究所/住友精化

 (独)産業技術総合研究所は6月5日、住友精化(株)と共同でアルコールからさまざまな化学物質を作る際に必要な酸化触媒として期待される機能性樹脂の新製法を開発したと発表した。従来技術は、過酸化水素を大量に使い爆発の危険や環境負荷が大きく実用化が難しかったが、新製法では新しい触媒や有機溶剤を採用してこれらの問題を解決した。今後、さらに製造プロセスを改良してコストを低減し実用化を目指す。

 

■新しい触媒で反応効率高める

 

 開発したのは機能性樹脂「ニトロキシドポリマー」の製法。この樹脂は水に溶かすと消毒薬のホルマリンになる「ホルムアルデヒド」などをアルコールから作る際の酸化触媒などとして使え、その酸化還元機能はさまざまな用途に展開できると期待されている。
 ニトロキシドポリマーは、原料物質「ピぺリジン(メタ)アクリレートポリマー」を過酸化水素で酸化することにより得られるが、今回この反応に必要な有機溶剤と触媒を新たに見出し、新製法の開発につなげた。
 原料物質を酸化する際には過酸化水素を用いるが、従来は実際に酸化に使われる量の数倍以上もの過酸化水素を必要とした。有効に使われなかった過酸化水素は分解されて酸素を大量に発生、爆発の原因になるなど問題点が多かった。そこで研究グループは、原料物質の酸化反応プロセスを詳細に解析。反応に使うアルコール系有機溶剤が過酸化水素の激しい分解に関与していることを解明した。
 このため研究グループは、他のさまざまな有機溶剤を検討、「N,N‐ジメチルアセトアミド」と呼ばれる有機溶剤を使うことで過酸化水素の分解をほぼ完全に抑えられることを突き止めた。さらに、原料の酸化反応を促進する触媒としてタングステン酸とリン化合物を用いることで、酸化反応の効率を95%まで高めることに成功した。
 研究グループは「過酸化水素の使用量は原料の2倍程度。実用的で安全な製法であり、副生成物も水だけで低環境負荷だ」と新製法の実用化に期待している。

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