(独)物質・材料研究機構は6月5日、耐久性や発光性能などに優れ、フルカラー発光ができる有機液体材料を開発したと発表した。汎用の有機蛍光色素のアントラセンを素材に用いたもので、折りたたみ可能なフルカラー表示モニターや携帯デバイスなどへの活用が期待できるという。
■300℃の熱にも安定、光安定性5倍に
フルカラー表示デバイス向けに近年有機性発光材料の重要性が増しているが、これまでの有機性発光材料は、光照射による変色や脱色への耐性、いわゆる光安定性が低く、塗布すると発光分子が凝集して発光性能が落ちるといった問題点があった。
産総研の研究チームは今回、紫外線を当てると青色の蛍光を示すアントラセンに、有機分子のアルキル鎖を結合することにより、アントラセン同士の凝集が生じない液状の青色蛍光物質を生み出した。
この物質は、およそマイナス60℃で液体になり、室温下で粘性が低く、約300℃の熱にも安定で、市販のアントラセン色素の5倍以上の光安定性がある。
さらに研究チームは、この液体に他の粉末状発光色素を均一に混合することができ、波長365nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)の単色光の光照射下でマルチカラーの発光制御が可能なことを見出し、発光色の異なる粉末を微量混ぜ込む簡単な操作によっていろいろな発光色を調整できる液体材料を得た。
新材料は様々な形状、基材の表面に塗布でき、良質な面状発光をすることから、塗布型のフルカラー発光デバイスの創製などが期待できるとしている。

青色発光するアントラセン液体(左端)を素材に調整された365nmの紫外光照射下でのフルカラー発光パネル(提供:物質・材料研究機構)