知覚意識を支える脳神経メカニズムを解明
―視床枕が知覚意識の「確信度」を計算
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は13日、これまでその機能が大きな謎だった脳深部の「視床枕(ししょうちん)」という領域が果たしている役割を解明したと発表した。目の前で見えている世界の主観的な確からしさ、いわゆる知覚の確信の度合いに影響を及ぼしているという。この知見は、妄想や盲視といった意識障害の病態メカニズム解明やロボットの外界認識などへの応用が期待できるという。

 

■サルを使って行動変化などを実験

 

 視床枕は進化の過程で目覚ましく拡大してきた部位で、霊長類の脳では大きな容積を占めており、回路としては大脳皮質の中でも視覚系皮質領域と密接に結合していることが知られている。しかし、その働きや意義は不明だった。
 研究チームは、サルに赤い丸、緑の丸を上下に動かすという視覚刺激を与え、神経活動の振る舞いや、視床枕を働かなくさせた場合の行動変化などを調べる実験をした。
 その結果、知覚意識を支えるうえで不可欠な「確信度」という信号が、視床枕で計算されていることを発見した。
 例えばある刺激が見えたか、見えなかったかというテストをした場合に、絶対に見えた、おそらく見えた、見えたかどうかわからない、というように、視覚刺激をどのくらい確からしく感じるか程度の差が生じる。それが確信度で、今回それが視床枕で計算されていることを見出した。
 今回の成果は、意識の神経メカニズムに関する定量的な研究などに手掛かりを与えとともに、知覚意識が低下・逸脱している病態の診断・治療、あるいは人工知能への応用などが期待できるという。

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