
自動調光シートの構造と機能の模式図。窓ガラスにこのシートを貼り付けると、景色に対しては常に透明なのに、自動的に高度の高い夏の太陽光は遮り、冬の光は透過させる(提供:産業技術総合研究所)
(独)産業技術総合研究所と住友化学(株)は5月16日、太陽の高度が夏と冬で異なることからくる太陽光の入射角の違いを利用して太陽光の入射量を自動的に調節する透明な調光シートを開発したと発表した。現行の調光シートは電圧をかけるなどして光の透過を調節しているが、太陽光の入射角で入射量を自動的に調光するのは初めての試み。このシートを窓ガラス内側に貼るだけで太陽光の自動調光が可能になり、冷暖房負荷軽減による省エネが期待される。
■2~3年内の実用化目指す
この調光シートは、季節による太陽光の入射角の違いを利用し、太陽高度が高い夏は全反射させて直達日射光を遮蔽、高度の低い冬は透過させる。2枚の薄いシートを極薄空気層を挟んで貼り合わせた構造になっている。貼り合わせ面は、ある角度で斜めに切られていて、この空気層が臨界角という一定角度より大きな角度で入射してきた直達日射光は全反射させ、それ以下の角度では透過させることで、太陽光の入射量を調節する。これはシート材料と空気の屈折率の違い(シート材の方が大きい)を利用したもので、自動的に起きる。
外の景色からの光は、太陽ほどの高度はないから、冬の太陽と同じで反射せずに透過するが、シート1枚では光の屈折で景色が浮き上がる。そこで、同じ角度に傾きをつけた別のシートを1枚、上下ひっくり返して貼り合わせることで、光の屈折を打ち消している。さまざまな調査の結果、日本では入射角60度以上の日光を遮るように設計すると、夏に最も効率よく太陽エネルギーを遮断できることが分かった。
今回試作のシートの調光特性を調べた結果、理論的に予想されるレベルにはまだ達していないものの、こうした構造の調光シートが実現可能なことは実証できたという。今後、より高性能が出せるよう、住友化学で作成法の改良や窓ガラスへの実装方などの検討を進め、2~3年以内の実用化を目指す。