内陸数kmの地下まで津波の海水浸透
―仙台平野南部など空中電磁探査
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は2月14日、東日本大震災による津波で海水が地下にどこまで浸透したかをヘリコプターで上空から電磁探査した調査結果を発表した。調査では海岸線から内陸数kmの津波浸水域で、地下5mまでの浅い部分に電気を通しやすい層が広く分布していることなどが分かった。淡水性の地下水を探り当てられる可能性もあり、新しい井戸の掘削候補地選定などに役立つと期待している。
 探査が行われたのは、宮城県の仙台平野南部と福島県北部の松川浦地区。100m間隔で設定した東西方向の線に沿って電磁探査した。
 調査ではヘリコプターから周期的に強度が変わる磁場を地上に送り、地盤が発する二次的な磁場を捉えた。二次的な磁場の強さは地盤の電気的性質で強度が変わるため、海水の浸透で電気を通しやすくなった地盤の広がりが推定できる。地上に当てる磁場の変動周期を変えれば、地下の深度別に推定することも可能という。
 調査の結果、深さ5mまでの地下浅部に電気を通しやすい層が広がる地域は津波の浸水域とほぼ重なり、その原因は津波による海水が浸透したためと推定された。また、仙台平野南部では10m以深の地下深部でも農業用排水路に沿って電気を通しやすい層があり、海水が排水路に沿って浸透した様子がうかがえた。
 一方、こうした電気を通しやすい層の分布域に囲まれる形で、電気を通しにくい層が存在していることもわかった。産総研では、これら電気を通しにくい層の分布域には淡水性の地下水が存在している可能性があるとみている。
 被災地の復興には稲作やイチゴ栽培など活用する淡水性の地下水確保が急務となっているため、産総研は今後さらに調査データを詳しく分析するとともに、ボーリングによって実際に淡水が存在するかなどを確認する。

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ヘリコプターで計測装置を収納した容器を吊り下げて空中電磁探査を行った(提供:産業技術総合研究所)